債券(インカム・守り)
国や企業にお金を貸し、利息(クーポン)と満期の額面で稼ぐ“債権者”の取引。価格は金利と逆に動き、株と相関が低いため、分散・待機資金・リスクオフのヘッジに効きます。値動きは穏やかでリターン上限は限定的ですが、攻めの株に対する“守りの軸”。株で勝ちたい人ほど押さえたい土台です。
- 保有時間
- 数年〜満期(数ヶ月の機動も)
- 取引回数
- 低頻度(資産配分が中心)
- 狙う値幅
- クーポン + 価格変動(金利次第)
- 判断材料
- 金利・金融政策・格付け・イールドカーブ
- 心理的負荷
- 低〜中(値動きは穏やか)
この手法を回す手順
上から順に。各ステップをタップすると、その詳細セクションへ移動します。迷ったら、この順序に戻ってきてください。
- 01
目的と置き場所を決める
守り(分散)・待機資金・インカム・金利を取る、のどれが目的かを定める。ポートフォリオ全体の中での役割を先に決める。
詳しく見る → - 02
金利・景気局面を読む
政策金利の方向、イールドカーブ(順/逆)、信用スプレッドで、いま金利を固定すべきか・短く待つべきかを判断する。
詳しく見る → - 03
種類とデュレーションを選ぶ
国債か社債か、満期(デュレーション)の長短を選ぶ。金利低下を取るなら長期、守り・待機なら短期、と目的に合わせる。
詳しく見る → - 04
個別かETF/投信か・為替を決める
満期で元本確定したいなら個別債券、少額・分散ならETF/投信。外債は為替を取るか(ヘッジなし)消すか(ヘッジあり)を決める。
詳しく見る → - 05
配分を決めて組成
デュレーションと格付けでリスクを見積もり、1発行体に集中させず分散して組成する。ラダー等で満期も分散する。
詳しく見る → - 06
執行前チェック
共通の4領域に加え、デュレーション・格付け・為替・インフレ・流動性の固有項目を最終確認する。
詳しく見る →
債券 ── “貸して利息をもらう”、守りの土台
債券は『国や企業にお金を貸し、利息(クーポン)と満期の額面で稼ぐ』取引。株のオーナー(株主)に対し、債券は貸し手(債権者)です。価格は金利と逆に動き、株と相関が低いため、分散・待機資金・リスクオフのヘッジに効きます。まずは基礎概念と種類、そして債券固有の着眼点を押さえます。
債券投資は『国や企業にお金を貸し、利息(クーポン)と満期の額面で稼ぐ“債権者”』の取引です。株が会社の所有権(オーナー)なら、債券は会社への貸付。倒産時の弁済順位は株より先で、満期まで持てば元本(額面)と利息が確定します。最大の特徴は(1)価格が金利と“逆”に動くこと、(2)長期債ほど金利変動で大きく動く(デュレーション)こと、(3)株と相関が低く、ポートフォリオの分散・待機資金・リスクオフのヘッジに効くこと。値動きは穏やかでリターンの上限は限定的ですが、攻めの株に対する“守りの軸”として、株で勝ちたい人ほど押さえておきたい土台です。なお『債券=絶対安全』は誤解で、金利リスク・信用リスク・インフレ・為替で普通に値下がりします。
まず押さえる基礎概念
クーポン・満期・価格↔金利・YTM・デュレーション・格付け額面とクーポン
意味:額面=満期に戻る金額(例100)。クーポン=額面に対する利息率(例 年3%)。多くは固定で定期的に受け取る。
ポイント:債券の“もらえるお金”の正体。クーポンがインカム、満期の額面が元本。まずこの2つが投資家のリターン源泉。
満期と償還
意味:満期(償還日)に額面が返ってくる。1年未満の短期から30年超の超長期まで。満期まで持てば価格変動は最終的に消える。
ポイント:株にない“終わり”がある。満期保有を前提にすれば、途中の値動きを気にせず元本+利息を確定できる。
価格と金利は逆に動く
意味:市場金利が上がると既発債の価格は下がり、金利が下がると価格は上がる。これが債券の心臓部。
ポイント:新発債が高い金利で出れば、低クーポンの古い債券は割安にしないと売れないため。金利を読むことが債券投資の核心。
最終利回り(YTM)
意味:今の価格で買って満期まで持った場合の年率総合リターン。クーポン+償還差損益を含む。
ポイント:債券同士を比べる物差し。価格が額面より安ければYTMはクーポンより高く、高ければ低くなる。表面利率より重要。
デュレーション
意味:金利変化への価格の感応度(おおむね残存年数に近い)。デュレーション8.5の債券は金利+1%で約−8.5%動く。
ポイント:“どれだけ金利リスクを取っているか”の物差し。長期債ほど大きく、サイジングの基準になる。株のATRに相当。
格付けと信用
意味:発行体の返済能力をAAA〜Dで評価(S&P/Moody's)。BBB-/Baa3以上が投資適格、それ未満が投機的(ハイイールド)。
ポイント:デフォルト(債務不履行)リスクの目安。国債との利回り差(スプレッド)が信用リスクの対価。不況でスプレッドは拡大する。
債券の種類(信用リスクの低い順)
国債 / 社債 / ファンド ── 中身でリスクが全く違う国債(日本・米国)
性格:国が発行する最も信用リスクの低い債券。米国債(T-Bill<1年/T-Note/T-Bond)は世界の“安全資産”の基準。
着目:ポートフォリオの錨。リスクオフで買われやすい。米国債は利回りが高い反面、円建て投資家は為替を負う。
物価連動国債(TIPS)
性格:元本がインフレ率に連動して増減する国債。インフレで実質価値が目減りしにくい。
着目:通常の債券の弱点(インフレ目減り)を補う。インフレ再燃が心配な局面のヘッジとして組み入れる。
投資適格社債
性格:優良企業(格付BBB-/Baa3以上)の社債。国債より高い利回り=わずかな信用リスクの対価。
着目:国債コアに上乗せ利回りを足す中核。発行体を分散し、景気後退でのスプレッド拡大に注意する。
ハイイールド債
性格:格付BB+/Ba1以下のジャンク債。高利回りだが値動きは株に近く、不況時に急落する。
着目:“債券の皮をかぶった株”。インカムは大きいが守りの資産ではない。リスク資産として小さく持つ。
債券ETF・投信
性格:1本で数百〜数千銘柄に分散。少額から買え、総合(AGG/BND)・長期国債(TLT)・社債(LQD)等を選べる(例示)。
着目:個人の現実的な入口。ただし“満期がない”=価格変動が続き元本は確定しない。為替ヘッジあり/なしを選ぶ。
何に気がつくのか
債券特有の着眼点(金利・カーブ・スプレッド・インフレ・為替)政策金利・金融政策
何を:中央銀行の利上げ/利下げの方向。短期金利を直接動かし、債券価格全体の最大のドライバ。
なぜ効く:金利が下がる局面では債券価格が上がる。政策の“方向”を読めれば、デュレーションの取り方が決まる。
イールドカーブ
何を:満期ごとの利回りを結んだ線。順イールド(長期>短期)が平常、逆イールド(短期>長期)は景気後退の先行シグナル。
なぜ効く:どの満期が割安か・景気が今どの局面かを読む地図。逆イールドは株の投資家にとっても重要な警戒サイン。
信用スプレッド
何を:社債と国債の利回り差。広がる=信用不安(不況)、縮む=楽観。ハイイールドのスプレッドは特に敏感。
なぜ効く:市場の“恐怖”の温度計。スプレッド拡大は社債の値下がりを意味し、株の地合い悪化とも連動する。
インフレ・実質金利
何を:物価上昇率と、名目金利からインフレを引いた実質金利。インフレは固定クーポンの実質価値を削る。
なぜ効く:高インフレは債券の最大の敵。利上げ観測を通じて価格を押し下げる。TIPSや短期化で備える判断材料。
格付け変更
何を:発行体の格上げ/格下げ。格下げは価格下落・利回り上昇、投資適格からの転落(フォールンエンジェル)は大きく動く。
なぜ効く:信用リスクの変化が価格に直結。保有債券の格付け推移を追い、悪化なら入替を検討する材料になる。
為替(外債)
何を:米国債など外貨建て債券の円換算リターンを左右する。円高は目減り、円安は上乗せ。
なぜ効く:高利回りの外債でも、円高で利回り分が吹き飛ぶことがある。ヘッジあり/なしの選択が実質リターンを決める。
固有の優位性と、はまりやすい罠
低相関・インカム・元本確定・ヘッジ ↔ 金利・信用・インフレ・為替株と違う動きで、全体を安定させる
債券は株と相関が低く、株が下げる局面で値持ち・上昇しやすい。組み合わせるとポートフォリオ全体の値動きがマイルドになり、暴落時のダメージと“狼狽売り”を抑える守りの土台になる。
定期的なクーポンと、待機資金の置き場
定期的に受け取るクーポンが安定収入になる。短期国債やMMFは、次の株の押し目を待つ“待機資金”を、利息を得ながら置いておく場所として優秀。現金を遊ばせない。
満期保有なら、元本と利息が確定する
個別債券を満期まで持てば、途中の価格変動に関係なく額面と利息が戻る(発行体が破綻しなければ)。ゴールが決まっているため、リターンを計画に組み込みやすい。株にはない確実性。
リスクオフで買われ、株の保険になる
景気後退・金融不安では、安全資産である国債に資金が逃避し買われやすい。株の急落に対する“保険”として機能する局面がある(ただし常に逆相関とは限らない、後述)。
金利上昇で普通に値下がりする
『債券=安全』は半分だけ正しい。市場金利が上がると価格は下がり、長期債はデュレーションぶん大きく動く(例: デュレーション17なら金利+1%で約−17%)。2022年は株と債券が同時に大きく下げた。
発行体が破綻すれば戻らない
社債やハイイールドは発行体のデフォルトで元本が大きく毀損する。格付けとスプレッドで対価を測り、1発行体への集中を避けて分散する。ハイイールドは不況時に株のように急落する。
固定クーポンはインフレで実質目減り
高インフレ局面では、受け取る固定の利息と額面の“実質価値”が削られる。名目では元本が戻っても、購買力では負けることがある。TIPSや短期化、実物資産で補う発想が要る。
外債は為替、ETFは元本確定しない
高利回りの外債も、円高で円換算リターンが目減りする。さらに債券ETF/投信には“満期がない”ため価格変動が続き、個別債のように元本が確定しない。元本確定が欲しいなら個別債券の満期保有。
王道の債券戦略 ── 守りの土台から、金利を取りにいくまで
金利観と目的(守り/待機/インカム/金利を取る)に応じて型を選びます。各戦略の地合いと水準を図で確認し、組成・主リスク・狙う成果・目安まで分解します。
国債コア(守りの土台)
高格付けの国債を中核に据え、ポートフォリオの錨(守り)にする。基本は満期保有で元本+利息を確定。
いつ使う:株の比率が高く、全体のリスクを下げて分散したい時。
なぜ国債は最も信用リスクが低く、リスクオフで買われやすい。ここを土台に、他の資産でリターンを取りにいく設計の起点。
ラダー(はしご)
満期を1・3・5・7・10年などに分散して保有。毎年いずれかが満期を迎え、その資金を再投資して回す。
いつ使う:金利の方向が読みにくく、タイミングを賭けたくない時。
なぜ満期と再投資を分散することで、“いつ金利を固定するか”という難しい判断を不要にする。中立で淡々と回せる王道。
バーベル
短期と長期の両端に寄せ、中期を抜く。短期で機動性(再投資)を、長期で利回りを同時に取る。
いつ使う:金利の方向に確信はないが、利回りも機動性も欲しい時。
なぜ短期=守りと再投資余力、長期=利回り、を同居させる。ラダーより金利観を少し反映させたい時の型。
デュレーション長期化(金利低下を取る)
利下げ・景気減速を見込み、長期債(長期国債ETF等)で“値上がり益”を積極的に狙う。攻めの債券。
いつ使う:利上げ打ち止め〜利下げ転換が見え、長期金利の低下を読む時。
なぜ債券で“方向を当てて稼ぐ”数少ない型。金利と価格が逆に動く性質を、長いデュレーションで増幅して取りにいく。
短期化&MMF(守り・待機)
金利上昇・先行き不透明な局面で、短期債やMMFに寄せて価格変動を抑え、利息を得ながら待機する。
いつ使う:金利上昇局面、または相場が不安定で現金を温存したい時。
なぜ短期債は金利上昇に強く、価格がほぼ動かない。現金をただ寝かせず、利息を得て次の出番を待つ“賢い現金”。
クレジット(社債で上乗せ)
投資適格社債を中心に、国債より高い利回り(スプレッド)を取りにいく。ハイイールドは小さく、不況に注意。
いつ使う:景気が底堅く、信用スプレッドが過度に狭くない(対価が取れる)時。
なぜ信用リスクの対価としてのスプレッドを、分散で取りにいく。ただし“高利回り=高リスク”を忘れず、守りの国債とは役割を分ける。
図はイメージです(縦軸は債券価格=金利の裏返し)。多くの戦略は“配分(アロケーション)”であり、デュレーション × 想定金利変化で最大損失の目安を出し、1発行体に集中させず分散するのが大前提です。
材料から読む ── 金利・インフレ・景気を配分に変える
債券を動かす材料(金融政策・インフレ・景気・信用・為替)は、『金利の方向・信用(スプレッド)・時間(デュレーション)』のどれにどう効くかで、選ぶべき配分が決まります。まず材料の“型”を一覧で押さえ、代表的な3つを具体例で深掘りします。
材料 → 価格・方向・戦略の早見表
その材料が金利・信用のどちらに効くかで配分が決まる| 材料 | 価格・利回りへの影響 | 方向の出方 | 候補戦略 | 典型的な罠 |
|---|---|---|---|---|
利下げ局面(金融緩和) Rate Cuts | 金利低下→債券価格は上昇(長期債ほど大) | デュレーション長期化が有利 | 長期債/長期ETFで値上がり益+クーポンを取る | “利下げ織り込み済み”だと、発表で材料出尽くしの反落 |
利上げ局面(金融引き締め) Rate Hikes | 金利上昇→債券価格は下落(長期債ほど痛い) | 短期化・MMFで防御 | 短期債/MMFで待機、デュレーションを短く | 高利回りに釣られ長期債を掴むと、さらなる利上げで含み損 |
インフレ指標(CPI) Inflation (CPI) | 高インフレ→利上げ観測で価格下落 | 実質価値の目減り、TIPSが相対優位 | TIPS・短期化でインフレに備える | 名目利回りの高さに安心し、実質マイナスを見落とす |
景気後退懸念 Recession Fear | 安全資産(国債)が買われ価格上昇 | 国債は強気、社債(信用)は弱気に分かれる | 国債でヘッジ/信用(社債・HY)は縮小 | 国債と社債を“同じ債券”と捉え、信用悪化を見逃す |
信用不安・格付け変更 Credit Event | スプレッド拡大で社債・HYが下落 | 投資適格へ逃避、ハイイールドは売られる | 格付けを点検し質の低い社債を入替 | “高利回り”の正体が信用リスク。スプレッド拡大で価格毀損 |
為替(外債) FX Move | 円高→外債の円換算リターンが目減り | ヘッジあり/なしで実質リターンが変わる | 為替を取らないならヘッジあり投信を選ぶ | 高利回りの米国債でも、円高で利回り分が吹き飛ぶ |
代表シナリオを深掘り(3本)
状況 → 方向(金利)/信用/時間(デュレーション)の読み → 戦略選択 → 管理状況:インフレが鈍化し景気も減速、中央銀行が利上げ打ち止め〜利下げへ転じる兆し。長期金利が高値から低下を始めた。
強気(金利低下=債券価格上昇)。デュレーション長期化が効く
信用は比較的落ち着き、国債主導で価格が上がる
数ヶ月〜数年。利下げサイクルに沿って継続
- デュレーション長期化(長期国債/ETF)金利低下ぶんを長いデュレーションで増幅して取る。値上がり益+クーポンの二重取り。攻めの債券の本命。
- 短期化・MMFのまま(非推奨)守りに徹し続けると、金利低下局面の値上がり益を丸ごと取り逃す(機会損失)。局面が変わったら攻めに転じる。
枠の一部で長期国債ETFを買い、撤退ライン(強い指標でタカ派回帰=シナリオ崩壊)を明文化。外債なら為替ヘッジあり/なしを決める。
金利低下が織り込まれ上値が重くなったら一部利確。インカム狙いなら残しつつ、金利反転の兆しで縮小。
債券で“方向を当てて稼ぐ”数少ない型。金利と価格が逆に動く性質を、デュレーションで意図的に増幅する。
状況:物価が再加速し、中央銀行が利上げ継続・長期化の構え。長期金利が上昇し、長期債が下落している。
弱気(金利上昇=債券価格下落)。守りが正解
実質金利の上昇で、固定クーポンの妙味が低下
インフレが収まるまでの数ヶ月〜
- 短期化&MMF+TIPS短期債/MMFは金利上昇に強く価格がほぼ動かない。TIPSはインフレ連動で実質価値を守る。守りに徹する局面。
- 高利回りの長期債を掴む(非推奨)表面利回りの高さに釣られて長期債を買うと、さらなる利上げで含み損が拡大。利回りとデュレーションは別物。
デュレーションを短くして金利上昇の打撃を最小化。待機資金として利息を得つつ、利上げ打ち止めのサインを待つ。
利上げ打ち止め〜転換の兆しが出たら、段階的にデュレーションを長期化して攻めに切り替える。
金利上昇局面の債券は“守って待つ”。短期債は現金の上位互換で、次の利下げ局面の出番に備える待機場所。
状況:景気後退が現実味を帯び、株が急落。安全資産の国債に資金が逃避する一方、社債(特にハイイールド)は信用スプレッド拡大で売られている。
国債は強気(逃避買い)、社債・HYは弱気(信用悪化)に二極化
信用スプレッドが急拡大=社債の価格下落圧力
景気後退局面の数ヶ月〜
- 国債で株のヘッジリスクオフで国債が買われやすく、株の急落に対する保険になる。ポートフォリオ全体のドローダウンを和らげる。
- ハイイールドで“逆張りインカム”(要注意)スプレッド拡大で利回りは魅力的に見えるが、デフォルト増で価格はさらに毀損しうる。底打ち確認まで小さく。
守りは国債に寄せ、社債は質(投資適格)を上げて分散。ハイイールドは縮小し、株の保険として国債を機能させる。
ただし“常に株と逆相関”ではない(インフレ主導の下げでは同時安)。逆相関が効く局面かを、インフレ環境で見極める。
不況・リスクオフでは『国債=守り、社債=信用リスク』と役割が割れる。同じ“債券”でも中身でまったく別物になる。
注記上記はすべて教育目的の“架空”シナリオです。実際の金利・スプレッド・為替は地合いで大きく変わり、インフレ主導の局面では株と債券が同時に下落することもあります(2022年が典型)。重要なのは『金利の方向・信用(スプレッド)・時間(デュレーション)に分解し、目的(守り/待機/インカム/金利を取る)に合った種類とデュレーションを選ぶ』という思考プロセスです。
実例で追う(債券)── 利下げを読んだデュレーション長期化を“数字”で
基礎・戦略・運用を1本に統合します。利下げ転換を読んで長期国債ETFを買う1本を、債券枠100万円からデュレーション・金利変化・価格・分配金・撤退ラインまで数字で追います。
利上げ打ち止め〜利下げ転換を読み、待機資金の一部で長期国債ETF(デュレーション≒17)を買う1本。口座(債券枠)100万円から配分を決め、デュレーション・金利変化・価格・分配金・撤退ラインまですべて数字で追う。債券の肝である『金利の方向を読み、デュレーションでリスクとリターンを設計する』流れを体感する。
- Day 0 / 環境認識気づき
利下げ転換のサインを読む
何に気づいたインフレ指標が鈍化、景気も減速。中央銀行はタカ派姿勢を緩め、市場は利下げを織り込み始めた。長期金利は4.5%付近から低下の兆し。
なぜそう考えた金利低下=債券価格上昇の局面。守り(短期)から攻め(長期)へ切り替える好機。ただし全力は禁物、枠の一部で取る。
何をした長期国債ETF(デュレーション≒17)を候補に。為替は取りたくないのでヘッジあり商品を選定。撤退ラインを先に考える。
- Day 0 / サイジング判断
デュレーションで損益とリスクを見積もる
何に気づいた想定: 長期金利が4.5%→3.5%(−1%)。デュレーション17なら価格は約 −17×(−1%)=+17%。分配金(利回り)は年〜4%程度。
なぜそう考えた逆に金利が+1%なら約−17%。リスクは対称。だから債券枠100万円のうち一部に限定し、シナリオ崩壊で撤退する設計にする。
何をした100万円を配分(債券枠の範囲内)。撤退ライン=『強い雇用/CPIでタカ派回帰=利下げシナリオ崩壊』と明文化。為替ヘッジありで為替リスクは中立化。
- Week 1 / 執行実行
長期国債ETFを組成
何に気づいた金利低下が継続し、ETF価格は底堅い。
なぜそう考えた計画どおり。ここからは“管理”フェーズ。日々の小さな上下は気にせず、金利の方向だけ追う。
何をした100万円分を買い。撤退ライン(シナリオ崩壊)をアラート設定。分配金は再投資する方針を決める。
- Month 1–3 / 管理管理
金利低下が進み、含み益+分配金
何に気づいた長期金利が3.9%まで低下し、ETF価格は約+10%。分配金も受領。
なぜそう考えたシナリオ通り。まず一部利確で“負けないポジション”にし、残りは利下げサイクルの継続を取りにいく。
何をした半分を利確(+10%分を確保)。残りは保有を継続し、撤退ラインを建値圏へ引き上げる。
- Month 4 / 決済決済
利下げ織り込みが進み、残りを利確
何に気づいた金利3.5%まで低下し利下げがほぼ織り込まれた。上値が重くなり、これ以上のデュレーション益は限定的。
なぜそう考えた“方向を取る”フェーズの終わり。ここからはインカム勝負になるので、攻めの長期債は一旦利確する判断。
何をした残りを約+14%で利確。合計リターン=値上がり益(平均+12%程度)+分配金。次は短期化して次の局面を待つ。
- Month 4 / 振り返り振り返り
ジャーナルに記録
何に気づいた金利の方向を読み、デュレーションでサイズを設計し、為替を消し、撤退ラインを守れた。全力にしなかったのも◎。
なぜそう考えた結果(勝ち)ではなくプロセスを採点。改善は『一部はインカム目的で長く残す選択肢も検討』。
何をした商品・デュレーション・金利シナリオ・損益・為替の扱い・撤退ラインを記録。『利下げ×長期化』を勝ちパターンとして分類。
運用 ── 管理とリスク配分で“使える”に変える
買って終わりではありません。債券は満期・再投資・デュレーション調整・為替・信用といった固有の管理があり、『どう持ち続け、どう配分するか』が成果を決めます。出口の方針と、デュレーションでリスクを測る配分の作法を固めます。
管理 ── どう持ち続け、いつ動かすか
満期/売却 / 再投資 / デュレーション調整 / 防御 / 為替 / 信用満期保有か売却かを決める
やること:個別債券は『満期まで持って元本確定』か『金利・信用の変化で途中売却』かを、買う前に方針として決める。
なぜ:満期保有なら途中の値動きは無視できる。売却前提ならデュレーションと出口条件を管理する。目的で運用が変わる。
クーポン・満期金の再投資
やること:受け取ったクーポンや満期償還金を、その時の金利で再投資して回す(ラダーの肝)。
なぜ:再投資で複利が効き、金利水準にも追随できる。受け取って遊ばせると、インカムの複利と利回り追随を逃す。
デュレーション調整
やること:金利観の変化に応じて、長期化(金利低下を取る)/短期化(守る)へポートフォリオのデュレーションを動かす。
なぜ:デュレーションは債券の“アクセルとブレーキ”。局面に合わせて踏み替えることが、攻守の切り替えそのもの。
利上げ局面の防御
やること:金利上昇局面では短期債・MMFへ寄せ、価格下落を最小化して待機する。高利回りの長期債に飛びつかない。
なぜ:長期債は利上げで大きく下落する。守るべき時に守れるかが、年間の成績(とメンタル)を左右する。
為替ヘッジの判断
やること:外債は、為替も取りにいく(ヘッジなし)か、消す(ヘッジあり)かを明確に決める。
なぜ:債券の金利リターンと為替の損益は別物。意図せず為替リスクを上乗せすると、債券のはずが為替トレードになる。
格下げ・信用悪化への対応
やること:保有社債の格付け推移とスプレッドを点検し、悪化(格下げ・スプレッド拡大)なら質の高い債券へ入替える。
なぜ:信用は静かに悪化し、ある日急落する。早めに質を上げておくことが、デフォルトによる元本毀損の最大の予防。
リスク管理と配分
デュレーションでリスクを測り、格付け・通貨を分散するデュレーションでサイジング
やること:『デュレーション × 想定金利変化 × 金額』で最大損失の目安を出し、許容範囲に収まる配分にする。
なぜ:債券のリスク量はデュレーションで決まる。長期債を大きく持つほど金利リスクが膨らむ。株のサイジングと同じ発想。
格付けと分散
やること:投資適格を中心に、ハイイールドは小さく。発行体・業種・国を分散し、信用リスクを1点に集中させない。
なぜ:1発行体のデフォルトで大きく毀損するのが信用リスク。分散はデフォルトの“当たり”を薄める唯一の確実な防御。
守りと攻めの役割を分ける
やること:国債(守り・ヘッジ)とハイイールド(攻め・株に近い)を“同じ債券”と混同せず、役割を分けて配分する。
なぜ:ハイイールドを守りの資産と誤認すると、不況で株と一緒に急落して二重にやられる。中身でリスクは全く別物。
為替リスクの管理
やること:外債の比率と、ヘッジあり/なしの方針を決める。円建て資産とのバランスで通貨の偏りを管理する。
なぜ:高利回り外債は円高で実質マイナスにもなる。為替は債券の利回りを丸ごと打ち消す力があると織り込む。
インフレへの備え
やること:高インフレが心配なら、TIPS(物価連動)や短期化、実物資産を組み合わせて固定クーポンの目減りに備える。
なぜ:インフレは債券最大の敵。名目で元本が戻っても購買力で負ける“静かな損失”を、商品選択でヘッジする。
流動性とETFの注意
やること:ハイイールドや一部社債は流動性が低い。債券ETF/投信は“満期がない”ため元本確定しない点を理解して使う。
なぜ:売りたい時に売れない・元本が戻ると誤解する、が事故のもと。元本確定が要るなら個別債券の満期保有を選ぶ。
債券の組成前“上乗せ”チェック
共通の執行前チェックに加えて確認する固有項目- ☐この債券の役割は何か(守り/分散/待機/インカム/金利を取る)を言えるか
- ☐金利・景気局面(政策金利の方向・イールドカーブ・スプレッド)を確認したか
- ☐目的に合った種類(国債/社債)とデュレーションを選んだか
- ☐デュレーション × 想定金利変化 × 金額 の最大損失目安は許容内か
- ☐格付けを確認し、1発行体・1業種に集中していないか(分散したか)
- ☐個別債券(満期で元本確定)か、ETF/投信(満期なし)かを理解して選んだか
- ☐外債なら為替を取るか(ヘッジなし)・消すか(ヘッジあり)を決めたか
- ☐インフレ・流動性のリスクを踏まえ、TIPSや短期の比率は適切か
執行前チェックリスト ── 引き金を引く前に
毎トレード、引き金を引く前に回す確認です。クリックでチェックし、全項目が埋まって初めて“執行可能”。1つでも欠ければ、その回は見送ります。(チェック状態はこのブラウザに保存されます)